味覚障害は、リンパ腫の治療を始めてから2~6週後にあらわれることがあり、約6割の患者さんが経験する副作用の一つですが、治療終了後は徐々に味覚が回復することが多いといわれています。
毎日の食事が少しでも楽しくなるように、それぞれの症状に合わせた食事メニューの選択や調理の工夫をご紹介しますので、無理をしないように取り入れられるところから少しずつ試してみましょう。
※「口の中が乾いた感じがする、ざらざらする」はこちら(口腔乾燥症)を、「食べ物がしみる」はこちら(口内炎)をご覧ください。
味覚の変化は周囲の人が気づきにくい問題ですので、違和感がある場合は悩まずに医師や看護師、栄養士などに相談しましょう。食事のメニューや味付けなどについて具体的なアドバイスを受けられることがあります。
抗がん剤を使った化学療法や放射線療法によって、味を感じ取る細胞(味蕾)やそれを伝える神経がダメージを受けることが主な原因です。また、味の成分を味蕾に運ぶ唾液の分泌量が低下し、口が乾燥することにより、味の感じ方が変わることもあります。
その他、使用している薬剤によっては、亜鉛の吸収が妨げられ、亜鉛不足が原因になることもあります。
味を感じやすくさせたり、味覚障害を悪化さ
せないためのケアのポイントをご
紹介します。
それぞれの症状に合わせて味付けや食材をほ
んの
少し工夫することで、味を感じやすくな
る場合があ
ります。
また、味付けだけでなく、食べることができ
たと
いう満足感を感じることも大切です。
高血圧、糖尿病、腎臓病など他の病気を患っ
てい
て、塩分や糖分の制限を指導されている
患者さんの
場合、調味料の使用量を大きく
変更する前に、医
師とよく相談してください。
味が薄く感じる まったく味がし ない |
|
塩やしょうゆを 苦く感じる 金属のような味 がする |
|
全体的に食べ物 を苦く感じる |
|
何でも甘く感じる |
|
砂を噛んでいる ような感じが す る |
|
水でもしょっぱく感じる |
|
料理は味だけではなく、シソやショウガ、すだちやレモンなどで香りを引き立てるとおいしく感じることがあります。また、雰囲気を変えると食欲が増すことがあるので、外食をしたり、ご家族や友人とともに食事をする機会を作ってみましょう。
亜鉛は細胞が分裂するために必要な栄養素です。亜鉛が不足すると味を感じ取る細胞の再生が進まなくなるため、結果的に味覚障害を引き起こします。亜鉛の不足は検査で診断することができ、必要に応じて亜鉛製剤が処方されることがあります。そのほかにも、亜鉛を多く含む食材(カキやうなぎ、ゴマ、ヒジキなどの海藻類、肉類など)やサプリメントを使ってご自身で補給することもできますが、サプリメントを利用する場合には、他のお薬との飲み合わせなどの問題もありますので、事前に医師、看護師、薬剤師へ相談するようにしましょう。
口腔内には多くの細菌がいます。リンパ腫の治療によって免疫力の低下が起こると、細菌が原因となる合併症があらわれることがあります。そのため、リンパ腫の治療開始前に歯科を受診し、むし歯などの処置を受けておきましょう。また、リンパ腫の治療中も定期的に歯科検診を受けて口腔内の衛生環境を良好に保つようにしましょう。
ちょっとした工夫で食事をおいしく楽しむことができるよう、いくつかの方法を紹介しました。たくさん食べようとせず、少しずつ盛り付けるのも工夫の一つです。ここで紹介した方法以外にも、それぞれの患者さんに合ったさまざまな対処法が考えられますので、栄養相談の機会を利用するのもよいでしょう。
対応に困った時は、遠慮せずに医師や看護師、栄養士に相談しましょう。
2024年3月現在の情報を元に作成
2024年3月現在の情報を元に作成
多数回該当や世帯合算などの条件により自己負担の上限額が軽減される場合についてご紹介します。
質問しておきたいことについて、事前にメモを用意して質問リストをつくって持っていきましょう。
リンパ腫の治療には、入院治療、通院治療があります。
ご本人が安心して治療を受けられるよう、ご家族のかたのサポートが重要です。
治療中に生じる副作用について解説するとともに、患者さん自身でできる予防法、症状を和らげるための対策について詳しく解説します。
病気を取り巻く問題である仕事・治療費・暮らしに焦点をあてて、患者さんの生活の身の回りのアドバイスをします。
治療をスムーズに進めるためのポイントやヒントとなる情報をリンパ腫治療のエキスパートよりお伝えします。
ご家族のかたへ
監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長 兼 臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生
大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。
かんきつ類のような酸味のあるものは、塩味が増したように感じさせ
ます。また、だしを濃く取ったり、洋食では乳製品(バターなど)、
和食では酒やみりんを使うことでコク味が増し、調味料の量を抑える
ことができます。
また、同じ食べ物でも温度によって味の感じ方は変わります。熱すぎ
ても冷たすぎても味は感じにくくなるので、人肌程度の温度にしてみ
るのもよいでしょう。