リンパ腫の治療中に、疲れやすいと感じることがあります。休んですぐに回復するのであれば問題ありませんが、強い疲労感が長く続くと、日常生活や治療に影響することもあります。疲れが続くときは、医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。疲労を和らげたり、日常生活の中で上手に付き合っていったりするためのケアのポイントも紹介しますので、無理のない範囲で行える方法を試してみましょう。
健康な人であれば日常生活の中で疲労を感じても、ほとんどは休息をとることで回復します。一方、リンパ腫の患者さんでは、十分に休んでも強い疲労感がとれず、長い間続くことがあります。こうした症状を感じたら、早めに医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
リンパ腫の症状として、発熱や体重減少などとともに強い疲労感が起こることもあります。
抗がん剤による化学療法や放射線療法 後に、疲労が起こることがあります。正確な機序は解明されていませんが、治療で損傷を受けた体の組織が修復されるときに多くのエネルギーが必要であること、体内に死滅したがん細胞が多くなることなどが関係しているのではないかといわれています。また、ステロイド治療を中止した後は一時的に強い倦怠感が見られることがあります。
治療の副作用として起こりうる貧血や感染症、脱水、栄養障害の症状としても疲労を感じることがあります。また、治療に伴う不安・緊張感などの精神的な影響も、疲労の原因になります。
抗がん剤による化学療法では、患者さんの体の状態などにより異なりますが、抗がん剤を投与してから1週間程度は、強い疲労の副作用が起こりやすく、次の治療までに徐々におさまることが多いです。抗がん剤の投与回数を重ねるごとに疲労感は強くなり、治療期間全体の中盤に最も強くなりやすい傾向があります。
放射線療法では、治療を開始した2週目くらいから、疲労があらわれる患者さんが多く、治療期間の中盤から後半に疲労がより強くなる傾向があります。また、放射線療法が行われる平日に疲労が続き、週末には軽くなることが多いです。
こうした治療にともなう疲労は、数か月続いて治まりますが、長い場合は数年続くこともあります。 疲労が起こりやすい時期を知ることで、その時期に大事なことが重ならないよう、事前にスケジュールを調整し、休むことができるようにしておきましょう。
三嶋秀行 監:そのまま使える がん化学療法 患者説明ガイド, メディカ出版, p217, 2015
神里みどり:日がん看会誌, 1999; 13(2): 48-59
疲労の症状を軽くする、日常生活の中でうまく付き合っていくためのケアのポイントをご紹介します。
疲労の症状を軽くするために、エネルギー配分を上手く行うことが大切です。エネルギー配分は、症状があらわれる時間帯やタイミングを目安にすると考えやすいです。疲労の症状を感じた日にちや時間帯、どんな時に疲れを感じたかを、具体的な症状と一緒に、日記などに記録するとよいでしょう。自分のパターンを憶えておくことで、症状をあまり強く感じない時間帯に優先度の高い活動をするようにしたり、特に疲れを感じるようなことは周りの人に手伝ってもらいながら調整します。また、記録を医師や看護師に見せることで、負担の少ない活動のしかたや、活動の優先順位の決め方、休息のタイミングについて、相談でき、アドバイスをもらうことができます。
強い疲労を感じていると、日常の生活ができなくなる場合があります。自分が大切にしたいこと(食事、入浴、仕事、趣味など)を行うために、エネルギー(活力)を温存しておくことが重要です。必要なものは手が届きやすい位置に置くようにするなど、普段行っている行動も、より負担の少ない方法を考えましょう。また、自分で行うのが難しいことは、周りの人に手伝ってもらうのもよいでしょう。1日の中で、こまめに休息をとることも大切です。
疲労を軽くするには、精神的に安定した状態を保つことが大切です。今まで行ってきた趣味など、気分転換になることがないか考えてみましょう。もし、具体的に思い浮かばなかったり、どの程度まで行ってよいかなど、わからない場合は、医師や看護師、周りの方に相談してみるのもよいでしょう。
気分転換になることは人によってさまざまです。楽しいと思える趣味や自分が心地よいと感じることを試してみましょう。例えば、好きな音楽を聴いたり、マッサージを受けたり、好きな香りのアロマオイルを入れたお風呂に入ったりしてみるのもよいでしょう。また、疲弊しない程度に、ヨガや体操(庭や畑仕事は避けるべき)、休憩をしながらの家事などによって、軽く体を動かして気分転換するのもよいかもしれません。
疲労を改善するために、質のよい睡眠をとることが大切です。昼間に睡眠をとり過ぎてしまうと、夜十分に眠ることができなくなり、昼夜逆転してしまう原因になります。夜によく眠れない場合は、昼間の休息は短時間にとどめ、朝は決まった時間に起きるなど規則正しい生活を心がけましょう。また、夜どうしても眠れない場合は、医師や看護師、薬剤師に相談してみましょう。
疲労を感じるからといって、ずっと横になっていると、心肺機能や筋力が低下し、ますます疲労感が強くなることもあります。体調がよい日には、無理のない範囲で、軽い運動(ストレッチや散歩など)を行うとよいでしょう。
治療中につらい疲労でお悩みの患者さんに役立つような、日常生活の中での工夫などをご紹介しました。治療後もしばらく疲労を感じたり、体力がなかなか回復しないと思うこともあるかもしれませんが、ゆっくりと上手に向き合っていきましょう。疲労の原因が貧血、感染症、脱水、栄養障害などの場合は、治療によって対処できることもありますので、疲労が続くときは、我慢をせずに、医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
国立がん研究センター がん対策情報センター:がん情報サービス「だるさ・倦怠感 もっと詳しく」
(https://ganjoho.jp/public/support/condition/fatigue/ld01.html)
[2024年3月閲覧]
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リンパ腫の治療には、入院治療、通院治療があります。
ご本人が安心して治療を受けられるよう、ご家族のかたのサポートが重要です。
治療中に生じる副作用について解説するとともに、患者さん自身でできる予防法、症状を和らげるための対策について詳しく解説します。
病気を取り巻く問題である仕事・治療費・暮らしに焦点をあてて、患者さんの生活の身の回りのアドバイスをします。
治療をスムーズに進めるためのポイントやヒントとなる情報をリンパ腫治療のエキスパートよりお伝えします。
ご家族のかたへ
監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長 兼 臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生
大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。
医師や看護師、薬剤師に疲労について伝えるときは、疲労の程度や毎日の生活で、できなくなっていること、苦痛に感じていることを話すようにしましょう。「体が重く、起き上がるのもつらい」「何をする気にもならない」「昼間に疲労が強く、寝てばかりいるので、夜眠れない」など、状況を具体的に話すことで、つらさをより明確に伝えることができます。
症状によっては、治療内容やスケジュールを患者さんの体の状態に合わせて変更することもあるので、気になる症状は我慢せずに伝えるようにしましょう。