リンパ腫の治療法を決めていくにあたっては、様々な疑問や不安を感じる方も多いと思います。そうした疑問や不安を医師にどう伝えれば良いのでしょうか。また、主治医以外の先生に話をうかがうセカンドオピニオンはどういった時に利用するものなのでしょうか?今回は、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センターの先生方に、先生への質問やセカンドオピニオンについて医師、看護師のお立場からお話をうかがいました。
吉田先生(以下、敬称略) 診察では特に何も話さず、後で看護師に「実はしびれが強くて…」と打ち明ける患者さんもいらっしゃいますね。そういう患者さんからうかがったお話は、治療に関係することであればカルテに記入してスタッフ間でも共有するようにしています。
永井先生 本来は患者さんも医師も対等な立場なので、遠慮せずに医師に質問をしていただきたいのですが、そうはいっても患者さんから話しづらいこともあるのでしょうね。とはいえ、数ヵ月から半年の間、治療を納得して続けていくためには、やはりどれだけわれわれスタッフ、とくに医師と患者さんの間でコミュニケーションが取れているかが鍵となると考えています。チームの誰かが把握したことは医師やほかのスタッフにも伝わるように体制を整えていますので、医師に言いにくい場合はほかのスタッフに声をかけてみてください。
吉田 治療法についての質問は、最近、患者さんだけではなくご家族の方からの問合せも増えました。関連する情報を調べて来て、「ここに書いてある治療法となぜ違うのか」「この治療法は患者の年齢的にはきついのではないか」といった内容も多いです。治療法の説明に看護師が同席している場合は看護師からも後で補足しますし、同席していない場合はあらためて医師から説明をしていただけるように依頼しています。患者さんだけでなく、家族の方にも納得して治療を受けていただくことも大切ですので、疑問がある場合はご家族の方もスタッフに相談していただければと思います。
豊田先生(以下、敬称略) 診断直後はがんという事実を受け入れがたいでしょうし、治療が始まれば治療自体の精神的な負担も大きいと思います。実際、「こんなはずじゃなかった」「こんなに入院が長くなると思わなかった」という言葉を入院中の患者さんから聞くことがあります。看護師として少しでも不安を減らすような働きかけができると思いますので、どんな些細なことでも遠慮せずに話しかけてください。
吉田 入院中はかなり厳しい制限を設けていることがあるので、外来に移った後も同じように制限が必要なのか、制限はいつまで続くのかといった質問もあります。また、医療費に関する質問も受けることがあります。何か疑問が浮かんだら、看護師だけではなく、相談支援センターのソーシャルワーカーさんに相談するのも良いと思います。
永井 実際にはさまざまな治療法がありますが、セカンドオピニオンではその患者さんに初めてお会いするので、症状や検査値などを見て一般的な治療法を説明することが多いと思います。例えば標準治療が決まっているリンパ腫の場合には「あなたのリンパ腫ではこういうエビデンスがあるので、この治療法がガイドラインでも標準治療になっています」というお話をします。また、標準治療が確立されていない場合や何度目かの再発で新しい治療法を探している場合は、国内外の報告を基に「こういう治療法が治験で検討されていて、効果や副作用の結果は…」という説明をすることもあります。セカンドオピニオンはいろいろなパターンが考えられますが治療を選ぶのは患者さんなので、疑問に一つ一つお答えすることが大事だと思っています。
また、セカンドオピニオンはどの患者さんにも受けていただくことをお勧めしています。診断がついた時点ではなく、治療方針がある程度かたまった段階でセカンドオピニオンの話をすることが多いですね。ご本人が躊躇される場合は、ご家族だけで話を聞きに行くというのも良いかもしれません。
吉田 セカンドオピニオンのことは看護師からもご案内するようにしています。やはり「主治医に言うと嫌われるのではないか」と思う方は多いようですが、セカンドオピニオンは患者さんの権利ですので遠慮せずに看護師に相談をしてみてください。
豊田 セカンドオピニオンを希望する方の中には、詳しく話をうかがってみると「実は転院したかった」というケースもありました。どこの病院で治療を受けるかを決めるのは患者さんですが、セカンドオピニオンは転院のための相談ではありません。転院の場合はまず主治医にそのことを伝えていただいた後、あらためて転院のための手続きが必要になります。
吉田 ほかにも「ここは通うのが大変なので別の病院に移りたい」という相談を受けることがありますね。よくよくお話をうかがうと、実は医師との関係性に悩んでいたということもありました。転院したい、セカンドオピニオンを受けたいと思ったら、なぜそう思ったのか、主治医に言いたいことや聞いてみたいことは何かというのをご自身で振り返ってみてはいかがでしょうか。また、看護師に相談していただければ、どういう点に悩んでいるのか、一緒に考えていくこともできると思います。
永井 がんと診断されてすぐに受け入れられるものではないですし、治療についても最初は疑問だらけで1 回で納得できるものではないでしょう。すべての患者さんが治療開始前に疑問や不安を解消し、納得して治療に取り組むことができれば良いのですが、非常に難しいと感じています。インフォームドコンセント用の文書にはいつでも撤回できる旨が明記されていますので、「治療を始めた後でも受け入れられないような場合は、変えることができます」ということは必ずお伝えするようにしています。
また、患者さんと医療スタッフとは対等であり、最初のコミュニケーションが重要です。同時に、数ヵ月続くこともあるリンパ腫の治療を納得して続けていただくためにも、患者さんがなるべく安心して、いつでもだれにでも話せるような状況を維持することも心がけています。
多数回該当や世帯合算などの条件により自己負担の上限額が軽減される場合についてご紹介します。
質問しておきたいことについて、事前にメモを用意して質問リストをつくって持っていきましょう。
リンパ腫の治療には、入院治療、通院治療があります。
ご本人が安心して治療を受けられるよう、ご家族のかたのサポートが重要です。
治療中に生じる副作用について解説するとともに、患者さん自身でできる予防法、症状を和らげるための対策について詳しく解説します。
病気を取り巻く問題である仕事・治療費・暮らしに焦点をあてて、患者さんの生活の身の回りのアドバイスをします。
治療をスムーズに進めるためのポイントやヒントとなる情報をリンパ腫治療のエキスパートよりお伝えします。
ご家族のかたへ
監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長 兼 臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生
大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。
―診察前の面談をうまく使って質問を
施設によって異なりますが、医師の診察前に薬剤師や看護師との面談時間を設けている場合があります。そういう時にわからないことを質問したり、不安や悩み、要望を伝えると良いでしょう。当院では乳がんや大腸がんなどの患者さんには薬剤師が、移植を受けた患者さんには看護師が面談を行っています。面談の内容は、例えば「患者さんからの要望や体調などから考えて、皮膚障害の治療薬を変更してはどうか」「患者さんから副作用でこういう要望があった」といったコメントとしてカルテに記載されます。こうしたコメントを考慮して、医師は診察時にすぐに対応可能な体制を整えています。