質問 1
健康な時には問題のないウイルスや菌ってどんなもの?
空気中に存在しているカビや、自分の腸や皮膚にすんでいるウイルスや菌などがあります。
質問2
体力には自信があるから心配ない?
病気や治療の影響により免疫力が落ちてしまうので、もともと体力に自信がある方でも感染症にかかりやすくなります。
質問 3
入院中はいつでも治療できるから大丈夫?
入院中であれば、感染した場合にすぐに対応はできますが、感染予防は必要です。
リンパ腫の患者さんでは、病気や抗がん剤などの治療による影響で、細菌やウイルスに対するからだの抵抗力(免疫力)が弱くなります。そのため、かぜをひきやすくなったり、健康な時にはかからないような感染症にかかりやすくなります。感染症にかかると、リンパ腫の治療が予定通り行えなくなったり、治療がうまくいっても、感染症が悪化して入院をしなければならないこともあります。リンパ腫の治療を問題なく行うためにも、なぜ感染症にかかりやすくなるのか、感染症の予防法や早期発見のポイントを理解して、感染からからだを守りましょう。
白血球は減少していても、からだに感じる自覚症状はないこともあります。発熱などの感染症の症状がみられた場合には、すぐに病院に連絡して感染症の悪化を防ぎましょう。
国立がん研究センター看護部 編:国立がん研究センターに学ぶ がん薬物療法看護スキルアップ,南江堂, p121, 2018, 中川靖章 監:ドクターが教える 抗がん剤治療がラクになる生活術, 日東書院本社, p84-85, 2017を参考
リンパ腫は、その名の通りリンパ球のがんです。リンパ球とは白血球のひとつで、全身の血液やリンパをめぐりながらウイルスや菌を攻撃して、からだを病気から守っています。リンパ腫の患者さんでは、リンパ球のはたらきが弱くなるため、からだの免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。
リンパ腫の治療で使用される多くの抗がん剤の副作用に「骨髄抑制」という副作用があります。骨髄には血液をつくるはたらきがありますが、抗がん剤が骨髄のはたらきを抑制するため、血液が正常につくられなくなります。そのため、白血球の数が少なくなることで免疫力が低下します。つまり、リンパ腫の患者さんでは、リンパ球のはたらきが弱くなっているところに、抗がん剤による骨髄抑制が加わり、免疫力がさらに低下してしまいます。
とくに、造血幹細胞移植を行う場合には、大量の抗がん剤を投与するため免疫力が極度に低下します。造血幹細胞移植を行う患者さんでは特別な対応が必要になりますので、主治医の指示に従って感染予防を行ってください。
からだには常にたくさんのウイルスや菌が存在しています。健康な時には問題のないウイルスや菌が、免疫力が低下すると感染症をひきおこす原因となります。そのため、外からのウイルスや菌に対しての予防だけでなく、からだの中や皮膚にすむウイルスや菌に対しても注意することが必要です。
感染症にかからないようにするためには、日常生活のなかで注意しなければならないことがあります。いつもの生活を大きく変える必要はありません。基本的な感染予防をしっかりと行い、からだを感染症から守りましょう。
感染予防の基本は手洗い、うがいです。外出後、食事前後、トイレの後の手洗いは必ず行いましょう。石けんをよく泡立てて丁寧に洗い、石けんが残らないように流水でよく流します。口の中には常にたくさんの菌が存在しています。うがいはこまめに行いましょう。
平成27年 消費者庁・厚生労働省主催:
食中毒予防に関する意見交換会 資料4「食中毒予防のための衛生的な手洗いについて」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000090072.html)
[2024年3月閲覧]、
東京都感染症情報センター「手を洗いましょう(手洗い手順)」
(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/hand/)
[2024年3月閲覧]より作成
からだはいつも清潔に保つようにこころがけましょう。お風呂やシャワーにはできるだけ毎日入るようにして、下着は毎日交換します。温泉や銭湯などの利用については、主治医に相談してください。歯磨きは毎食後、起床時、寝る前に丁寧に行い、口の中を清潔に保ちましょう。入れ歯を使用している場合には、入れ歯専用の洗浄剤で毎日欠かさず洗浄します。入れ歯ケースも清潔にしておきましょう。
食材は新鮮なものを使い、調理後はできるだけ早く食べるようにしましょう。野菜や果物は流水でよく洗ってください。生のお魚などは、特に白血球が減少する時期にはなるべく控えるようにしましょう。食べていいものと食べない方がいいものについては、主治医に確認するようにしてください。
感染予防にはご家族のみなさんの協力が重要です。ちいさなお子さんがいるご家庭では、お子さんにも外で遊んだ後は手洗いを行うようにしてもらいましょう。部屋の中も掃除はこまめにして、清潔に保つようにしてください。ペットのトイレの始末などは、可能な限りご家族が行うようにしてください。
リンパ腫の治療中には特に感染症にかかりやすい時期(白血球が少ない時期)があります。その時期には特に注意が必要です。
リンパ腫の患者さんでは、病気そのものによって免疫力が低下している状態にありますが、抗がん剤治療の開始後はさらに白血球の数が少なくなり、感染症にかかりやすくなります。白血球が減少する時期については、主治医の先生から説明がありますので、そのような時期には特に注意するようにしましょう。
体調の変化に早く気がつくように、体温をはかる習慣をつけましょう。また、治療日誌などをつけて、毎日自分のからだの状態を記録しておくとよいでしょう。受診時には治療日誌を持参して、主治医の先生と確認するようにしましょう。
リンパ腫の治療中に感染症を予防するために日常生活でできること、感染症の症状に気づいた場合の注意点を紹介しました。自分が感染症にかかっているかどうかについて、自己判断は禁物です。からだのだるさを感じても我慢したり、熱が出ていてもからだが元気なので大丈夫とそのままにしてはいけません。急な発熱や寒気、排尿時の痛みなど、少しでも異常を感じたら、病院に連絡するようにしてください。
多数回該当や世帯合算などの条件により自己負担の上限額が軽減される場合についてご紹介します。
質問しておきたいことについて、事前にメモを用意して質問リストをつくって持っていきましょう。
リンパ腫の治療には、入院治療、通院治療があります。
ご本人が安心して治療を受けられるよう、ご家族のかたのサポートが重要です。
治療中に生じる副作用について解説するとともに、患者さん自身でできる予防法、症状を和らげるための対策について詳しく解説します。
病気を取り巻く問題である仕事・治療費・暮らしに焦点をあてて、患者さんの生活の身の回りのアドバイスをします。
治療をスムーズに進めるためのポイントやヒントとなる情報をリンパ腫治療のエキスパートよりお伝えします。
ご家族のかたへ
監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長 兼 臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生
大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。