監修:
名古屋大学医学部附属病院 血液内科 講師
島田 和之(しまだ かずゆき)先生
自家造血幹細胞移植
DLBCLでは初発の場合は、自家造血幹細胞移植が用いられることはほとんどありません。初回治療がうまくいかなかったり再発した場合は、二次治療(救援化学療法)の後、さらに徹底してがん細胞を減らすために移植が検討されます。身体への負担が大きい治療法なので、患者さんの年齢や全身状態などを考慮して、移植を行うかどうかを決めます。
自家造血幹細胞移植の流れ
造血幹細胞とは、血液細胞のもとになる細胞です。自家造血幹細胞移植では、患者さん自身の造血幹細胞を採取して保存しておきます。大量の抗がん剤や放射線治療によってがん細胞を破壊(前処置といいます)した後、保存しておいた造血幹細胞を移植して、血液細胞をつくれるようにします。移植した造血幹細胞が患者さんの骨髄の中で血液細胞をつくり始めることを生着といいます。
(イメージ図)
チーム医療のための血液がんの標準的化学療法(直江 知樹, 堀部 敬三 監),
メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2013 を参考に作成
自家造血幹細胞移植の治療期間は、前処置の方法や移植後の患者さんの状態などによって異なります。移植に使う幹細胞は、がん細胞を少しでも減らすための抗がん剤治療を行い、減った白血球数が増えるのを促す薬剤を投与してから約1週間後に採取します。移植の1週間〜10日ほど前から前処置を開始し、移植後は生着まで11日間程度、食事が摂れるようになり退院するまで約1ヵ月程度かかる場合が多いでしょう。
移植に伴う合併症
自家造血幹細胞移植では、前処置によって吐き気や脱毛などの副作用が生じる場合があります。また、骨髄抑制により白血球が減少し、感染症にかかりやすくなり、さらには重症化する可能性があります。このため、しっかりとした感染予防が必要で、患者さんは移植から生着まで無菌室で過ごします。
日本血液学会編:造血器腫瘍診療2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 5. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」
日本造血・免疫細胞療法学会:造血細胞移植ガイドライン 造血幹細胞, p3, 2021
飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p45, 2015
永井正 著:図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫, 法研, p42-43, p172, 2016
治療後の経過観察
治療効果が得られた場合も、再発する可能性は否定できないため、定期的な経過観察が必要です。
定期的な通院
経過観察のため定期的に通院し、リンパ節が腫れていないか、血液細胞の数に異常がみられたり、病気の進行度をあらわす検査値に異常がないか、治療後の副作用の状況はどうかなどを調べます。CTなどの画像検査を行うこともあります。
通院の間隔は決まっていませんが、病気の状態や患者さんの生活などから総合的に判断します。例えば、最初の2年は2~3ヵ月ごと、その後は3~6ヵ月ごと、といったスケジュールで経過観察します。
日本血液学会 編 :造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 悪性リンパ腫総論」
注意すべき症状
経過観察中には、患者さん自身が体調の変化に気づくことが重要です。どのような症状があらわれたら受診すべきか、主治医に確認しておきましょう。例えばリンパ節で発症したDLBCLの場合、以下のような症状には注意しましょう。
- リンパ節の腫れ(首、わきの下、足のつけ根など)
- リンパ節・皮膚の下のしこり
- お腹や背中の圧迫感
- 原因不明の発熱、だるさがつづく
- 吐き気、食欲不振
- 原因不明の頭痛や意識がぼんやりする
- 口が渇く、頻尿がつづく
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p59-p61, 2020より作成