貧血の症状を自覚した場合は、早めに医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
貧血は、血液の赤血球に含まれている、ヘモグロビンというタンパク質の濃度が低くなった状態のことです。ヘモグロビンにはからだの組織に酸素をとどけるはたらきがあるため、貧血により、その量が減ると体内の酸素が少なくなり、めまい、立ちくらみ、疲れやすい、息切れなどの症状があらわれます。 また、血液検査を行い、ヘモグロビンの値が成人男性では13g/dL未満、成人女性では12g/dL未満になると、貧血とみなされます。 リンパ腫の患者さんに貧血が起こる主な原因は次のとおりです。
令和3年4月改定 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性貧血
(溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、赤芽球ろう、鉄芽球性貧血、巨赤芽球性貧血)
(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1f05-r03.pdf)
[2024年3月閲覧]
リンパ腫が進行し、血液をつくるはたらきがある骨髄にもがんが広がると、赤血球がうまくつくれなくなり、貧血が起こりやすくなります。
抗がん剤を使った化学療法や放射線療法によって骨髄抑制と溶血が生じ、貧血が起こる場合もあります。
⾻髄の機能が抑制され、⾻髄で⾚⾎球をつくる⼒が低下するため、貧⾎が引き起こされます。
⾚⾎球が通常より早く壊れてしまうため、貧⾎の原因となります。
この場合、貧血の症状は、化学療法や放射線療法 による治療後、数週~数か月かけて徐々にあらわれます。
ヘモグロビンをつくるのに必要な鉄分の不足やビタミンの欠乏などの栄養障害や、消化管などから出血している場合にも貧血は起こります。
貧血の症状があらわれたときの対処法や貧血を予防するためのケアのポイントをご紹介します。
貧血によってめまいやふらつきが起こると、転倒する危険があります。めまいやふらつきを感じたら、すぐにしゃがみましょう。この姿勢は、転倒を防ぐことができ、貧血の症状が悪化するのを防ぎます。特に、抗がん剤の副作用によって血小板が減少している状態で、転倒などでけがをすると、出血が止まりにくいため、致命的な事故につながることがありますので、注意が必要です。 しばらくしゃがんでめまいが落ち着いたら、ゆっくりと立ち上がるようにします。また、階段やエスカレーターでの転倒は特に危険ですので、手すりにつかまるように心がけるとよいでしょう。
休息と活動のバランスを考えて予定を立てるようにしましょう。貧血によって疲れやすさやだるさが生じている場合、休息をとることが大切です。外出からの帰宅時、入浴後、食後などは、次の行動に移る前に楽な姿勢で休みましょう。
しかし、横になっている時間が多くなると体力がおちてしまうことがあります。体調がよいときには、無理をしない範囲で、短い時間散歩するなど軽めに体を動かすことも心がけましょう。
手や足のストレッチやマッサージを行うと、緊張感が和らいで、貧血によって起こる疲れやすさやだるさを軽くすることができます。無理のない範囲でゆっくりと行ってみましょう。
貧血を防ぐためには、赤血球(ヘモグロビン)の材料となるタンパク質や鉄分を多く含む食品を摂取することが大切です。タンパク質は、魚や肉、卵、乳製品、豆類など、鉄分は、レバー、赤身の魚、豆類、卵などに多く含まれています。動物性食品に含まれる鉄分は、植物性食品に含まれる鉄分より吸収率が高いといわれています。また、鉄の吸収を助けるビタミンC(緑黄色野菜や果物に多く含まれる)の摂取も必要です。バランスのとれた食事を心がけましょう。
厚生労働省:e-ヘルスネット「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html)
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貧血が起きた場合の工夫や予防するためのポイントをご紹介しました。貧血の症状がみられたら、リンパ腫の治療や日常生活に大きな影響が出る前に対処できるように、医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
多数回該当や世帯合算などの条件により自己負担の上限額が軽減される場合についてご紹介します。
質問しておきたいことについて、事前にメモを用意して質問リストをつくって持っていきましょう。
リンパ腫の治療には、入院治療、通院治療があります。
ご本人が安心して治療を受けられるよう、ご家族のかたのサポートが重要です。
治療中に生じる副作用について解説するとともに、患者さん自身でできる予防法、症状を和らげるための対策について詳しく解説します。
病気を取り巻く問題である仕事・治療費・暮らしに焦点をあてて、患者さんの生活の身の回りのアドバイスをします。
治療をスムーズに進めるためのポイントやヒントとなる情報をリンパ腫治療のエキスパートよりお伝えします。
ご家族のかたへ
監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長 兼 臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生
大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。
貧血のときよく見られる症状(めまい、ふらつき、頭が重いなど)は覚えておき、診察の時に医師や看護師に具体的に伝えるようにしてください。また、貧血が原因で、手足のしびれ、吐き気が表れたり、月経ではない時期の出血や血便がある場合は早めに医師や看護師に相談してください。
一方で、めまいや立ちくらみなど自覚症状がない場合もあり、血液検査で貧血と診断されることもあります。
貧血の程度がひどい場合などは、鉄剤が処方されることもあります。セルフケアだけでは改善されない場合も、医師や看護師、薬剤師に伝え、対処方法を相談するようにしましょう。
岡元るみ子ほか 編:改訂版 がん化学療法副作用対策ハンドブック 第3版,羊土社, p75-80,2019