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インドレントATLLの治療

監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長兼臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長

宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

インドレントATLLでは定期的な経過観察が重要です

インドレントATLLでは、ほとんどの場合、化学療法造血幹細胞移植のような治療を行いません。しかし、途中で急性型に変わることがあるため、経過観察をしっかり行います。

定期的な通院

経過観察のため定期的に通院し、リンパ節が腫れていないか、血液中の白血球やがん細胞が増えたり、病気の進行度をあらわす血液中のカルシウムやLDHが上昇していないか、などを調べます。

通院の間隔は決まっていませんが、病気の状態や患者さんの生活などから総合的に判断します(数ヵ月〜1年に1回)。

注意すべき症状

経過観察中に以下のような症状に気づいたら、受診するようにしましょう。

リンパ節の腫れ(首、わきの下、足のつけ根など)

皮膚のしこり

皮膚の症状(発疹など)

お腹や背中の圧迫感

原因不明の発熱、だるさがつづく

吐き気、食欲不振

原因不明の頭痛や意識がぼんやりする

口が渇く、頻尿がつづく(高カルシウム血症)

日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 9成人T細胞白血病・リンパ腫 総論」
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p60, 2020

皮膚症状がある場合はその治療を行います

皮膚症状がみられる場合は、皮膚病変のタイプや程度によって紫外線療法、放射線療法、塗り薬による治療などを行います。そのほか、手術で病変を取り除いたり、化学療法を行う場合もあります。

塗り薬

症状が軽い場合に行います。皮膚病変が進行した場合には、紫外線療法や放射線療法に変更します。

紫外線療法(光線療法)

皮膚の異常がみられる部位に紫外線を照射する治療法です。施設によりますが、外来の場合は数ヵ月通院し、週1〜3回程度の治療を行います。より高頻度で治療を行うため入院する場合もあります。
紫外線をあてるのみの治療のほか、紫外線への感受性を高める薬を服用/塗布してから紫外線を照射するPUVAプーバ 療法もあります。

紫外線療法(光線療法)

放射線療法

細胞のDNAを傷つけることにより、がん細胞を破壊する治療法で、塗り薬や紫外線療法では抑えられない病変に対して行います。

放射線療法

放射線をあてると正常な細胞もダメージを受けますが、がん細胞のほうがダメージを受けやすいため、がん細胞は破壊され正常な細胞は回復できるくらいの量の放射線を照射します。多くの病変に照射する場合は、全身の副作用がみられることがあります。
外来で治療可能で、頻度や回数は病気の状態によりますが、週5回程度、約4週間、通院します。

化学療法(抗がん剤治療)

紫外線療法や放射線療法で十分な効果が得られない場合、単剤の化学療法が検討されます。よく行われる単剤化学療法は、飲み薬の抗がん剤を21日間、つづけて服用し、1〜2週間の休薬期間をとる方法です。病状によって、これをくり返します。

平成25年度厚生労働科学研究費補助金 がん臨床研究事業
「成人T細胞白血病の治療を受ける患者さん・ご家族へ 第2版」
(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/133051/201314018B/201314018B0003.pdf)
[2024年3月閲覧]
飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p34-35, 2015
日本皮膚科学会 編:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版, 2020