監修:
愛知県がんセンター 病院長
山本 一仁(やまもと かずひと)先生
辺縁帯リンパ腫は血液細胞である
B細胞(リンパ球)のがんです
辺縁帯リンパ腫の発症の原因はまだ明らかではありませんが、細胞内の遺伝子に変異が起きることにより、がん遺伝子が活性化することで発症すると考えられています。また、一部には細菌・ウイルス感染症が関係していると考えられています。いずれにしても、白血球の中のB細胞ががん化して、無制限に増え続けることで発症します。そのため、辺縁帯リンパ腫がどのような病気かを理解するためには、まずB細胞の働きについて知っておく必要があります。
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版, 2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2 辺縁帯リンパ腫」
小林幸夫:日本内科学会雑誌, 97(7), p1581-1587, 2008
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p18, p20, 2020
B細胞とは
骨の中心にある骨髄の中には、すべての血液の元となる造血幹細胞があり、この造血幹細胞がいくつもの細胞に枝分かれして、最終的に赤血球、白血球、血小板などの血液細胞に成長していきます。辺縁帯リンパ腫の原因となるB細胞は、血液中にある白血球の中のリンパ球と呼ばれる細胞の一種です。
(イメージ図)
日本造血細胞移植学会 編:造血細胞移植ガイドライン 悪性リンパ腫(成人) 第3版, p28, 2019
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p20, p30, 2020
異物から身体を守る免疫
B細胞を含めて白血球は、主に免疫の機能を担っています。免疫とは、身体の中に細菌やウイルスなどの異物が入ったときに「異物だ」ということを認識して攻撃し、身体を守るしくみです。免疫力が低下すると、いろいろな感染症にかかりやすくなります。
がん化したB細胞は異常に増殖し本来の機能を果たさなくなります
B細胞は毎日つくられていますが、その数は一定の範囲内になるように調節されています。しかし、がん化した細胞は異常に増殖するようになり、本来のB細胞の機能を果たさなくなってしまいます。
そのため、がん細胞のかたまりができ、リンパ節などの腫れ(しこり)が生じたり、正常なB細胞が持っている免疫の機能に異常が起きたりします。また、がん細胞が放出する物質が悪影響を及ぼしたり、増えたがん細胞に臓器が圧迫されることなどにより、全身の症状が起こることがあります。
(イメージ図)
永井正 著:図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫, 法研, p182, 2016
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p20, p30, 2020
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版, 2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2 辺縁帯リンパ腫」
小林幸夫:日本内科学会雑誌, 97(7), p1581-1587, 2008
辺縁帯リンパ腫の“辺縁帯”とは何ですか?
辺縁帯とは、リンパ節にある球状の構造の一部をいいます。球状の構造はリンパ濾胞と呼ばれ、ウイルスや細菌などの異物が入ってくると、リンパ濾胞の中心部でB細胞が増殖します。このため、風邪をひくとリンパ節が腫れることがあります。
(イメージ図)
鈴木隆二 著:カラー図解 免疫学の基本がわかる辞典, 西東社, p43, 2015、
阿保亜紀子ほか:岩手医誌, 72(補冊), p243-252, 2021
塩沢英輔ほか:昭和医会誌, 67(1), p51-53, 2007より作図
辺縁帯リンパ腫は、リンパ濾胞の辺縁部においてB細胞ががん化したものと考えられていますが、発生場所は多岐にわたり、リンパ節や脾臓、またはB細胞が豊富に存在する他のリンパ組織でも発生します。辺縁帯リンパ腫は、がんが発生する場所によって3種類に分けられます。
愛知県がんセンター 病院長
山本 一仁 先生