2019年12月取材
治療を終え、日常生活に戻るときは、ホッとすると同時に、体調の変化や今後の⽣活への不安などを感じることもあるでしょう。今回は、治療後の⽣活で気をつけるべきことや通院の必要性などについて、医療法人社団春日会 理事長 兼 春日2丁目クリニック 院長 横山先生にお話をうかがいました。
横⼭先生(以下、敬称略) 治療が終わってからも、副作⽤の症状がしばらく残ることがあります。例えば、倦怠感や⼿⾜のしびれが続く、味覚が変わるなど、⽣活に影響を及ぼすこともあるかもしれません。また、脱⽑などにより外⾒の変化が起これば、精神的に苦痛もあるでしょう。ただ、それらの症状や変化は、時間の経過とともに少しずつ治まり、髪の⽑も、治療が終わればまた⽣えてきます。体調がよくないときは無理をせず、ゆっくり時間をかけて元の⽣活に戻っていけるよう考えられるといいですね。
寛解の状態になり、体調がよければ、⽇常⽣活の制限は特にありません。無理は禁物ですが、気を遣いすぎる必要はないでしょう。治療中に「あそこに⾏きたいな」「これを⾷べたいな」と考えていたことがあれば、できることから楽しんでみてはいかがでしょうか。
横⼭ リンパ腫のタイプにもよりますが、多くの場合、寛解となっても、再発の可能性は少なからずあります。再発への不安を抱く⽅もいらっしゃると思いますが、その不安を少しでも軽くするために、退院後も定期的に検査を⾏い、再発の有無を確認していただいています。
また、仮に再発した場合でも、その後の病気の進み⽅はリンパ腫の種類によって異なりますので、それぞれの病気の特性を患者さんに説明した上で、患者さんと相談しながら、フォローを続けていきます。
⽇常⽣活への不安は、患者さんの体調が回復し、元の⽣活を取り戻すにつれ、和らいでくることが多いようです。実際、治療後に元気に⽣活を続け、結婚・出産を経て「今は元気に⼦育てをしています」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。
定期的に検査をきちんと受け、その結果、問題がなければ、健康であることを確認し、それ以上はあまり⼼配しすぎずに前向きに⽣活できるといいですね。
横⼭ リンパ腫では外来治療が主体となるため、可能であれば、時短勤務や有給休暇などを活⽤しながら仕事を継続できることが理想です。ただし、体調によっては仕事を続けることが難しく、⻑期休暇をとったり、なかには退職したりする⽅もいらっしゃるでしょう。
治療が終わり、体調が回復した後に職場復帰や次の就職を考えるとき、相談できる窓⼝は多くあります。治療を受けた病院の相談⽀援センターや、全国の「がん診療連携拠点病院」に併設されている相談⽀援センターでは、ソーシャルワーカーが相談に応じます。復職の場合は、職場の産業医などの産業保健スタッフ、⼈事・総務部⾨、直属の上司などに相談する⽅法もあります。
横⼭ ⽇常⽣活で、これをしたら再発の可能性が⾼まるということは特にありません。定期検診は必ず受ける、疲れたときや体調がすぐれないときは無理をしない、体調について気になることがあれば早めに相談するなど、普段の⽣活で健康に気をつける以外は、あまり⼼配せずに⽣活していいでしょう。
ネガティブに時間を過ごすより、前向きな気持ちで楽しく⽣活するほうが、健康的ですよと患者さんにはお話ししています。
横⼭ 「病院に⾏って検査をすることを考えると憂うつになる」という⽅もいらっしゃるでしょう。しかし、リンパ腫は再発の可能性を伴う病気です。再発していないかを確認するため、また、万が⼀の再発を早期発⾒するためにも、定期検査は必ず受けていただきたいと思います。
検査が必要な期間や頻度は、リンパ腫の種類にもよりますが、当院では、治療終了後から2年間は3ヵ⽉に⼀度ぐらい、その後5年までは半年に⼀度ぐらいで来院いただいています。その後も私は患者さんに「⾃⼒で通えるうちは、通い続けてくださいね」と定期的な検査の継続をお願いしています。
⼀般的に、固形がんでは「5年再発しなかったら卒業」などと⾔われていますが、リンパ腫は種類が多く、なかには5年以上、10年以上たっても再発のリスクがあるタイプ、寛解と再発を繰り返しながら⼀⽣つきあっていくタイプもあります。
検査を受ける際は憂うつになりがちですが、「問題なし」と⾔われて笑顔で安⼼して帰宅される⽅も多いです。定期検診は忘れずに受けましょう。
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 悪性リンパ腫総論」
多数回該当や世帯合算などの条件により自己負担の上限額が軽減される場合についてご紹介します。
質問しておきたいことについて、事前にメモを用意して質問リストをつくって持っていきましょう。
リンパ腫の治療には、入院治療、通院治療があります。
ご本人が安心して治療を受けられるよう、ご家族のかたのサポートが重要です。
治療中に生じる副作用について解説するとともに、患者さん自身でできる予防法、症状を和らげるための対策について詳しく解説します。
病気を取り巻く問題である仕事・治療費・暮らしに焦点をあてて、患者さんの生活の身の回りのアドバイスをします。
治療をスムーズに進めるためのポイントやヒントとなる情報をリンパ腫治療のエキスパートよりお伝えします。
ご家族のかたへ
監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長 兼 臨床研究センター長、HTLV-1研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生
大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。
医療法人社団春日会 理事長 兼 春日2丁目クリニック 院長
横⼭ 雅⼤先生
治療を終えて日常生活を再開する患者さん及び
そのご家族へ
リンパ腫の治療は進歩しており、新たな薬も登場しています。きちんと治療を続ければ、治ることが期待できる病気、あるいは再発と寛解をくり返しながらも⽣活の質を保ち、その⼈らしく⽣活していくことが可能な病気と⾔えます。
不安な気持ちはあると思いますが、患者さんのそばには、ご家族、そして医療スタッフなど、サポートメンバーがついています。⼼配なことがあれば、⼀⼈で我慢せず、いつでも遠慮なく相談してください。みんなで⼀緒にがんばっていきましょう。