監修:
愛知県がんセンター 病院長
山本 一仁(やまもと かずひと)先生
各リンパ腫における治療法
:MALTリンパ腫
MALTリンパ腫は、からだのさまざまな部位に発症し、中でも胃や皮膚に好発すると言われています。胃で発生するMALTリンパ腫と胃以外で発生するMALTリンパ腫の治療法を説明します。
胃MALTリンパ腫の場合
限局期
胃MALTリンパ腫では、高い確率でピロリ菌とよばれる細菌感染が関係していると言われています。限局期でピロリ菌に感染している場合、まずは薬物によるピロリ菌の除菌治療を行います。除菌治療により、がんが小さくなれば、積極的な治療はせず経過を観察します。除菌治療が成功しない場合、もしくは除菌治療してもがんが小さくならず、症状がある場合には、ピロリ菌に感染していない場合にも同じように、放射線治療や、他の薬物治療を行います。経過観察後に再びがんが増殖してくる場合には、進行期 に準じた治療を行います。また、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)との境界病変*がある場合にはDLBCLと同様の治療を行います。
*境界病変 DLBCLとの区別がつかない腫瘍部分を指します。
胃MALTリンパ腫限局期の治療
進行期
進行期の胃MALTリンパ腫はモノクローナル抗体製剤や化学療法と組み合わせた治療を行います。経過観察後に再びリンパ腫が増殖してくる場合には、モノクローナル抗体製剤と化学療法や免疫調節薬を組み合わせた治療などを行います。また、DLBCLとの境界病変がある場合にはDLBCLと同様の治療を行います。
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」
胃以外MALTリンパ腫の場合
胃以外のMALTリンパ腫は病期(ステージ)Ⅰ期か、それ以外の病期によって治療法が異なります。ステージⅠの場合には、手術によってがんの部分を取り除く外科切除、もしくは放射線療法 、また経過観察を行います。ステージⅠ以外では進行期の濾胞性リンパ腫と同様の治療を行います。どのステージにおいても経過観察後に再びがんが増殖してくる場合には、進行期 に準じた治療を行います。また、DLBCLとの境界病変がある場合にはDLBCLと同様の治療を行います。
胃以外MALTリンパ腫の治療
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」
各リンパ腫における治療法
:脾辺縁帯リンパ腫
脾辺縁帯リンパ腫は、症状・血液中の全血球成分の減少(汎血球減少)があるかどうか、またC型肝炎であるかどうかによって治療法が異なります。症状・血液検査に大きな異常がない場合には、経過観察を行います。症状・血液検査に異常がある場合にはC型肝炎であるか検査を行い、陽性であれば、C型肝炎の治療(ウイルスに対する薬物治療)を優先させます。C型肝炎の治療を行ってもがんが小さくならない場合や経過観察後にリンパ腫が増殖した場合には、脾臓の摘出(脾摘)あるいは薬物療法を行います。
脾辺縁帯リンパ腫の治療
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」
各リンパ腫における治療法
:節性辺縁帯リンパ腫
節性辺縁帯リンパ腫は極めてまれながんで、十分な治療法が確立されていません。一般的に、治療法は進行期の胃MALTリンパ腫と同様な治療を行います。
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」